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「我々はただ、世界、そして人類の平和的存続を望み活動しているだけだ。大いなる神の命を受けている。皆、こんな小悪魔の言うことに惑わされるなよ」
マットが信者達を見下ろしながら言った。
彼らは一様に戸惑っている。しかし、洗脳が進んだ者ほど大きく頷いていた。
「アハハッ!」とラズが声をあげて笑った。「なにくせぇこと言ってんだ? 薬を効かせて朦朧としている連中に演説ぶっ込んで、神の遣いにでもなったつもりか? あんまりにもくさすぎるから、ケツの穴で喋ってんのかと思ったよ」
ゆっくりと歩きながら言い放つラズ。しかし態度とは裏腹に、その目と感覚は鋭く敵の動きをサーチする。子供の頃から戦闘や暗殺の術をたたき込まれてきた彼女は、わずかな殺気でも嗅ぎとる。今、サブマシンガンを構えそうになった男に素早く銃口を向けた。
その男の動きが止まる。他の者達も息を呑んだ。一瞬も気を抜けない緊張感が漂う。
ラズだけは、相変わらず笑みを浮かべながらマットに目を戻す。
「いいぜ、いつ始めても。どうせ素直に捕まるつもりはないんだろう? 私も良いお巡りさんになって手錠をかけるつもりなんてないんだよ。やりたいのは、てめえの体に口と鼻とケツ以外の穴を開けることだ。どこがいい? 場所は選ばせてやるぜ」
「ほざくなメス猫っ! 見た目だけはいいてめえの顔も体も、ボロボロにしちまうぞっ!」
ついにマットが怒鳴る。
「キャハハッ! 本性を現しやがった」嬉しそうに笑うラズ。「神様もズッコケてるぜ、今頃」
ラズが肩をすくめたその動作に合わせて、男達がいっせいにサブマシンガンを構える。
だが彼らが銃爪を引く寸前に、彼女は走り出す。そして飛び上がり壁を蹴り、宙を舞う。
銃声が響いた。男達のサブマシンガンより先に、ラズが動きながら目にもとまらぬ早さで銃撃を始める。
あっという間に4人が倒れた。皆、頭や心臓を打ち抜かれている。ラズの射撃の精度は悪魔をも凌ぐ。
体勢を崩された別の男達が慌てる。
ラズは飛び降りるとともに更に3人射殺し、太い柱の陰に隠れた。
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