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着地と同時に銃をホルスターに収め、目の前の瓦礫の山を飛び越える。
そこにはマットが伏せるようにして潜んでいた。
「この、悪魔のメス猫めっ!」
飛び出しざまマットが銃口を向ける。
しかし、ラズは余裕で彼の手を蹴り上げ、銃をはじき飛ばした。
うっ、と唸り後退るマット。
「私のことをメス猫って呼んで、今もまだ息してるヤツは一人もいないんだよ」
ラズが口元に笑みを浮かべながら睨みつける。
「ま、待て。抵抗はやめた。逮捕しろ。おまえも一応刑事だろう?」
慌てて手を上げるマット。
「しかたねえなぁ……」溜息をつき腰に手をやるラズだが……。「あれ、手錠が見あたんねぇよ」
彼女が自分の腰まわりを確かめるように視線を落とした。その隙を見て、マットは懐から大柄なナイフを取り出す。
「死ねっ!」
斬りかかるマット。ラズの胸をその切っ先で貫く……かと思われたが、それは叶わなかった。
スッと余裕で体を回転させて避けるラズ。そして瞬時に銃を抜き、マットに突きつけた。
「まったく、悪党っていうのはたいていやることが同じだな」
溜息交じりにこぼす。
「ラ、ラズ、取引しよう。金ならいくらでも出す」
オドオドとしながらも、必死に訴えかけるマット。
「うん、うん、それもやりがちだ。でも全部無駄だよ。最後の最後くらい、本当に神に祈りな。アーメンだかソーメンだかしらねぇけどよ」
つまらなそうにそう言うと、ラズは銃爪を引く。
銃声が1つ響き、マットの体は壊れたオモチャのように倒れた。
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