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お見舞
次の日からレオンハルト様は、お見舞いに美味しいフルーツなど毎日贈ってくれていた。
見舞いに来る度に私の顔色を伺い、頭を撫でながら熱が無いかを計ってくれる・・・顔色の優れない私の顔を覗き込むと額にキスをした。
(・・・え?)
感染症の話は聞いていたのかな・・・横目でレオンハルト様の顔を覗き見たが、微笑まれてしまった。
私は溜め息をつくと、気を取り直して病人のフリを続けたのだった。
*****
城へ来てから2週間が経ち、そろそろお店が心配になってきた私は、トルネスさんと相談して元気になったこということにして、レオンハルト様に辺境伯領へ帰ってもらうことにした。
帰る日の2日前、レオンハルト様が挨拶に来ると、私もお見舞いのお礼を言った。トルネスさんに呼ばれたメイドが部屋から出て行くと、空間に歪みが出来て周りに静けさが広がった。
「悪いが結界を張らせてもらった。防御と防音の結界だ・・・だから、助けを呼んでも誰も来ない」
「レオンハルト様、何を・・・・・」
「俺が気づかないとでも思ったのか?」
「・・・へ?」
「お前は、誰だ?・・・何を隠している?」
「何を言っているのですか?」
私はベッドの端まで追い詰められると、レオンハルト様に押し倒されていた。
「ここまで来たら逃げられないぞ。さあ、どういうことか説明してもらおうか」
レオンハルト様はベッドに乗り上がると、私に覆いかぶさり、顔を近づけてきた。焦った私は、隠していても仕方がないと思い、正直に話すことにした。
「私は、ただっ・・・頼まれただけなんです」
「頼まれた?」
「はい。最初から説明させていただきます・・・」
私は店に現れたトルネスさんが、私を殿下と勘違いしたところから、城に来るまでの経緯をレオンハルト様へ話して聞かせた。
「では、お前は王家とは関わり合いが無いのだな・・・それでは何故・・・」
「どうかされたのですか?」
「いや・・・なんでもない」
レオンハルト様は口元を押さえると、思案していた。
「なぁ・・・明日、帰る前に街へ一緒に出掛けないか?」
「・・・それが黙っていることの、交換条件ということでしょうか?」
「交換条件?・・・まあそうかな」
「分かりました。明日の朝、出かける準備をしておきます」
レオンハルト様が部屋から出ていくと、トルネスさんを呼び、バレてしまったことをお詫びした。それから、交換条件で明日は「一緒に出かける事になった」という話もする。
「なんでまた、そんな事に・・・危険などは、ありませんか?」
「危険?・・・いえ、大丈夫だと思いますが・・・」
「何か企んでいる可能性がありますからね・・・用心するに越したことはないでしょう。『備えあれば憂いなし』です」
トルネスさんはそう言うと、私に薬瓶を渡した。
「アルファやオメガ性の方が使う抑制剤です。万が一のことがあれば、お使いください」
「・・・ありがとうございます?」
私はβだったが、何があるか分からないとも思い、有り難くその薬を貰うことにしたのだった。
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