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スズランは僕が外出するとき、ミセスが二重の袋に入れて持たせてくれた。なぜか重さが増しているので中を見ると、白い袋に緑色が透けている何かが。
「野沢菜の漬物なの。日本のピクルスかな。たくさんあるからプレゼントに持っていって」
「ワーオ。マザー、アリガァト」
待ち合わせのファミレスに早めに着いた僕は、入口から離れた所にあるコニファーが植わったブロックに腰を落ちつけて彼女を待った。
そういえば日本へ来てから、雨らしい雨がなかったことに気づいたのは、そこらじゅうが車の排ガスとダストで埃っぽいせいだろう。
僕はそれに構うことなく、緑色のピクルス2袋に挟まれたスズランの花の香りを楽しんでいた。
優しいながらも凛と角がたつような香りが白い小花も含めて、彼女のイメージそのものだった。
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