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後日談――。
「喝ッ! 次にやったら破門っ!」
「師匠、あい!」
僕の顔を見るなり野太い声が飛んできたので、こちらも腹の底から応えた。
ケンカの傷そのままで稽古に行けば当然バレる。
僕が習っていたのは、相手を敬い、すべてに感謝し、義を重んじる空手だ。
形を習得することに忠実なので、実戦にはあまり向かないとされていて、ケンカはご法度を貫く道場だった。
〝その日〟に備える風潮があった国では、格闘技に勤しむ男たちが多く、小さい街にも選べるくらいに道場はあった。
そんな中で、僕が巡り会った師匠は規律に厳しく、酒やタバコの摂取も禁止していて、一番尊敬できる大人だった。
貧困国の悪習慣だ。
憂さ晴らしと称して、子どもたちの間にすら、どちらも同じくらいに浸透していた。
僕にはその悪循環が恐ろしかった。
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