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翌週、彼女と会えたときは、堂々と人前でキスもしていた。
そのノリのまま、僕はダーリオにワガママを言う。
「今夜のパフォーマンスはしたくないんだ」
彼は僕の一番の親友で、同い年の従兄弟で、生まれたときからの仲だ。
「ノロケやがって、コイツ!」
彼が僕の首に腕を巻きつけ、耳元に大声を飛ばしてきたとき、彼女と繋いだままだった僕の手には、さらに力が入った。
彼女も強く握り返してくれて〝幸せの電流〟を流し合う。
その夜のダーリオは、女の子のチームに飛び入り参加のうえ、センターまで務めていて、僕と二人のステージより盛り上がっていたのかもしれなかった。
彼はお調子者ではない。
困っている人がいれば誰にでも手を差し伸べていたし、未成年の隠れた酒やタバコの集まりでも歓迎される。
僕にとってはいつも、先回や気遣いを見せてくれる頼れる存在なのだ。
対して僕は、ひとつの事にこだわってしまって、周りが見えなくなったり、人付き合いにおいても誰とでもというわけにはいかなかった。
あとで思うと、そのときにダーリオに妙な対抗意識を起こしたせいで、僕は彼女の信用を失ってしまうのだ。
せっかくうまくいきそうだったのに。
ただ、その夜だけは幸せの絶頂だった。
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