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頭がかぁっと熱くなる。
おばあちゃんちは?
立ちすくんだ僕にサーシャが背中を向けて、人だかりに消えていったのが一瞬のことで、
見間違い?
いや、あのスカートは間違いない。僕が似合っていると褒めたからだ。
それを思えば踏み出せる第一歩があったが、追いかけたい気持ちを次の一歩に載せられない。
追いついたら何て言う?
彼女はいつから見ていた?
僕は何をしていた?
「ヘイ、ロー、どしたん?」
ダーリオが僕を呼んだ。彼はサーシャがいたのを見ていなかったようだ。
「悪い、帰る」
それだけ言い残すと僕は走り出した。
人だかりに突進して、ほうぼう探して回るが、彼女は見つからない。
そんなに長い間、立ち尽くしていた覚えはないし、先週彼女と最後に別れた方角を中心に見て回る。
でも――。
途方に暮れる僕の行く先は、もうあのゴミ置き場だけになっていて、
時間とともに息切れが落ち着いていく一方で、心臓の鼓動は自分のだらしなさに打ちつけられて、一向に治まる気配がなかった。
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