The Small Town in Europe

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The Small Town in Europe

あの国はのちにバラバラなこと言う指導者たちによって解体されてしまったが、 僕が子どものころは、英雄と名高い指導者の影響力が残っていて、国はまだひとつだった。 オリンピックが開催されたのも近隣の街。 市民の誰もが諸外国と肩を並べていく明るい未来を信じようとしていた。 そのころの僕。 12歳で左膝の内側に日本国旗の入れ墨を施して、日本かぶれと言われた空手少年だった。 僕に言わせれば、カンフーにもテコンドーにも興味があったから、格闘技かぶれだったけれど、僕の親父にすれば何少年でも結果は同じ。 「この売国奴!」 僕が眠っていたとき、夜中に酔っぱらって帰って来た親父に突然、ベッドから引きずり下ろされ、無防備なところを思い切り殴られた。 泣きながら止めに入った母を寝ぼけまなこで後ろに庇い、それが面白くなかった親父からのもう一発は、僕のパジャマを赤く染めた。 生まれつきなのか、僕の眠りは常に浅く、朝起きるのも苦手な子どもだったが、それをさらに悪化させてしまう事件となった。 どんなに疲れていても、うつらうつらとしか眠れず体を引きずって学校へ、帰宅のあとはいったん仮眠をしてから空手道場へ通うという生活だった。
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