博士の大発明

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「博士、眩しいので気をつけてください」 「私は大丈夫だ。このシニアグラスは紫外線に当たると黒くなるんだ」  心配して損した。  しばらくすると目も慣れてきた。久しぶりに見る屋外の風景は輝いていた。木々は緑の葉を繁らせ鳥も飛んでいる。街に出るとさらに輝いていた。人々は思い思いのファッションに身を包み笑顔を見せ平和を謳歌していた。  50年後には上空を敵国の戦闘機が飛び交い、人々は防空壕へと逃げ惑い、町中煙が立ち込め、道の端では負傷者がうめき声をあげていた。誰も笑ってなんかいなかった。大人も子どもも空腹にあえぎ強盗なんて日常茶飯事。配給もあったが全然足りてなんかいなかった。  この光景が50年後には……いや、そうならないようにしなければ。私が救うんだ。救世主となるのだ。 「博士、まず何からやりますか?」 「あそこはどうだ?」  博士が指差す先にはインターネットカフェがあった。なるほど、インターネットで掲示板に書き込みをし、世間に50年後の現状を知らせるのだ。『50年後から来た未来人』は話題になるだろう。  意気揚々とネットカフェに入ったが、身分証明書もない私たちは会員登録ができなかった。 「運転免許証があるじゃないか」 「いや〜、生年月日が今年って、誰が見ても偽物ですよ」 「何を言う。仕方ない、私の正体を教えよう。私は50年未来から来たのだ」 「……へぇ〜」  博士は店員の若い男と押し問答をしていた。中々理解してもらえないようだ。 「信じてもらえないのは当然でしょう。でもこれから世界は大変な事になるんです。第三次世界大戦が勃発し、ついには核戦争が始まり世界は滅亡するのです。それを阻止するために私たちはタイムマシンに乗ってこの時代にやってきたのです」  私の説明に店員は目を丸くした。
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