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「は? 何を言ってるんですか?」
信じられないのは当然だ。まさかこの平和な世の中がひっくり返るとは予想もしてないだろう。私だってそうだった。
「信じられないかもしれないけど、それが現実なんです」
「有り得ないよ。だって去年地球から核兵器は消滅したんだ」
「え?」
「世界のどの国も戦力は持たないって合意したんだ。日本の憲法第9条が世界の憲法になったんだ」
何だって? そんな事歴史で習わなかったぞ。
「もう世界から戦争は消えた。平和な世の中バンザイ!」
店員は両手を高々と挙げながら事務所に入って行った。
「博士、これは一体……」
「う〜む。どうやらタイムマシンは失敗だったようだ」
「え、でもちゃんと過去に来てます」
「過去は過去でも、違う世界線の過去に来てしまったようだ」
「は?」
全く意味が分からない。
「タイムトラベルが出来たとしても歴史を変えてはいけないと言われているのは知ってるね?」
「はい。歴史に介入して、生まれるべき人が生まれなくなったり、いないはずの人間が生まれてしまったりすると歴史が大きく変わってしまうからですよね?」
「うむ。だが歴史は決して変わらないという説もある。誰が何をしようと歴史は変わる事はない」
「何をしてもですか?」
「そうだ」
「じゃあ私たちがしようとする事は無駄なんですか?」
「そもそも今の状態を変だと思わないか? 世界から核兵器がなくなったとか、憲法第9条が世界憲法になったとか。聞いたこともない」
確かにその通りだ。
「歴史を変えようとしたから、我々は元の世界線からはじき飛ばされてしまったのだ」
「は?」
「いわゆるパラレルワールドだ」
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