博士の大発明

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「博士、とうとう食料が尽きてしまいました」 「なに? 食べられる物なら草でもかまわん。とりに行ってきなさい」 「地上はまだ放射能濃度が高くて出られません。それに放射能に汚染された草なんて食べても大丈夫なんでしょうか」 「う〜む……」  第三次世界大戦が始まると、私と博士は研究所の地下にあるシェルターに避難した。私たちの研究もあと一歩で成功というところまできていたのだ。世間の喧騒に邪魔されるわけにはいかなかった。  しばらくすると各国こぞって核攻撃を始めたとニュースで聞いた。それも想定して5年分の食料は確保してあった。もうニュースも流れてこない。人類は滅びたのか。それともただ放送局が破壊されただけなのか。  どちらにしても屋外に設置してある放射能濃度を計る線量計の値が高止まりしている。まだ外に出るわけにはいかない。 「もう5年経ったのかね?」 「……3年です」 「おかしいなあ。ちゃんと5年分備蓄しておいたのかね?」  博士ははち切れんばかりの頬を掻き、大きなお腹を揺らした。お前のせいだと言いたかったが、上司にそんな口をたたくわけにはいかない。  いや、もうそんなの関係ないのかもしれない。もしかしたら地球で生き残っているのは私と博士の2人だけなのかもしれない。だとしたら上司も部下もない。力のある方が上だ。ならば! と思ったが、自分の棒みたいな腕であの巨体をねじ伏せる事は難しそうだ。ならば寝ている間に……。 「仕方がない。過去に行こう」 「え?」 「過去に行って戦争を未然に防ぐんだ。私たちの科学力があればできるはずだ」 「じゃあ……」 「ああ。完成した」 「おお!」  博士はタイムマシンの研究をしていた。理論上は可能だと言われ続けていたが、実際に現実化させた者はいなかった。それがとうとう完成したのだ。
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