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   私は大学内でSAというバイトをしている。SAっていうのは「スチューデントアシスタント」の略。簡単に言えば、講義のお手伝いをする学生スタッフだ。とはいえ、あまり難しいことはやらない。スライドの準備をしたり、プリントを配ったり、出欠確認の手伝いをしたり、課題を集めたり……とか、その程度。でも、意外とお給料は良いから、このバイトを希望する人は多い。結局、抽選になって私はかなりの倍率の抽選を掻い潜って、見事SAになることが出来たという訳だ。  自慢じゃないが、私は昔からくじ運はかなり良い。「確実に当たりを引ける女」なんて昔はよく言われたものだ。  私は大学三回生。でも、今は後期だから殆ど必須の講義の単位は取り終えている。今期に取っている講義は一つか二つくらいで、それで卒業に必要な単位は全て取得できる。四回生はゼミと卒論だけで済む。  そんな状況なので、私が大学に来る用事の八割くらいはSAだ。  他の大学のSAはどうか分からないけど、この大学のSAには担当の講義が無い。スマホに「今日は〇〇先生の講義の手伝いをしに、どこどこの教室に行ってください」という連絡が来て、その指示通りにするだけだ。  大体は一週間前に連絡が来るが、たまに急に連絡が来ることもある。今日がまさにそのパターンだった。本来なら、今日は講義もないから家でのんびりする予定だったのに……。朝の九時に起きたらメッセージが入っていたので、見てみたら何と今日の十時半からの講義の手伝い! 慌てて準備して家を出て、大学のキャンパスに駆け込んだのだ。  そういえば、時間にばかり気を取られて「誰の講義なのか」とか「場所は何処か」とか確認していなかった。大学の正門の掲示板のある辺りで、私はスマホを取り出して確認してみた。 「えっ!?」  変な声が出た。周りの人がぎょっとしてこちらを振り向くので、慌てて片手で口を押さえる。  自分で言うのもなんだが、驚くのも無理はないと思う。凄くタイムリーな情報だったからね。 「今日は講義ではなく、研究室でプリントの整理をしてもらいます。  場所:理工学部 西行研究室」  先程、掲示板で見た研究室の名前だった。すっごい偶然だ。  そして、私は安堵した。いつも講義の手伝いばかりだったから今回もそうだと思ったけど、今日はプリントの整理だけらしい。これなら多分すぐに終わるし、そんなに重労働じゃないだろう。  私は文系なので普段は理工学部の棟に用事はないが、うちのキャンパスは文系と理系の棟が離れていないので理工学部に辿り着くのに支障はない。研究室の場所は案内板に書いてあるだろう。  取り敢えず、私は研究室に足を進めた。  
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