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1.Install
さて、皆さんはAIチャットをご存じだろうか? 「ChatGPT」とか聞いたことはあるかな?
今はそういうアプリが流行っている。AIとチャット形式で色々と話すことができ、様々な質問に答えてくれるのだ。
私、渡辺史絵拿は最初はこんなアプリに興味は無かった。暇なときにお喋りするのは友達との電話やチャットで事足りる。分からない事があったらググればいい。「ChatGPT」で得られる情報はあまり正確じゃないって聞く。だから、あまりレポートの課題で使用するのは気が進まないし、心の無い機械なんかとお喋りして何が楽しいのって考えてた。
だから、大学構内の掲示板にこんな貼り紙があっても、別に何の興味も湧かなかったんだ。
「※急募
AIチャットアプリのモニターを募集しています!
募集人員は一名。
給与は月4~5万円!
詳しい話を聞きたい方、面接希望の方は〇〇大学理工学部 西行研究室まで」
「これ本当かな?」
「AIチャットって、あれだろ? 適当に何かメッセージ打ち込めば、向こうから返事が返ってくるやつ」
「それのモニターで4、5万も貰えるのは楽だよな」
「でも、募集一名とか倍率高くね」
「取り敢えず、ダメ元で行ってみねぇ?」
「理工学部かぁ。行ってみるか」
掲示板の目の前で男子学生二人がそんな会話を繰り広げている様子が目に入り、興味本位で近付いてみると、この貼り紙があったという訳だ。
さっきも言ったけど、私はそういうのにあまり興味がない。機械音痴ってレベルではないけど、必要最低限しかPCやスマホは弄らない。だから、新しいアプリとかゲームとかが話題になっていても、結構スルーしがちだ。
大学生という身分では、確かに4~5万という給与は魅力に感じる。アプリを弄っているだけでそれが貰えるなら尚更だ。でも、さっきの男子学生が言っていた通り、募集人員一名は倍率が高過ぎる。こういうのはアプリとかデジタルとかに詳しい人が選ばれるだろうし、こんなにおいしいバイトであれば希望者は大勢殺到する筈。今から行っても、もう誰かが選ばれてしまっているだろう。
今すぐお金に困っている訳でもないし、バイトの内容に興味もない。
だから、私は研究室に行こうとは微塵も思わなかった。
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