夏の終わりに

夏の居場所

クーラーのない家の中。
うだるような暑さに耐え切れなくて外に出る。
夏休みは嫌い。
居場所がないから。
お金もないのに店の中を歩く。
スーパーは駄目。
万引きしたって疑われるから。
歩くだけならショッピングモールがいい。
虫の声も聞こえない。
人工的な空間。

歩き疲れて家に戻る。
鍵なんてかけない。
盗むものなんてこの家にはないから。

扉の前にセミが転がっていた。
死んでいると思った。
無視して木製の扉を開けた。
セミはいきなりジジッと乾いた音を立てて飛んで行った。

きしむ扉を開けると、ムワッと熱い空気が流れ出る。
西向きの窓から夕日が照りつける。
狭い台所はオレンジに染まる。

お母さんが帰ってきた。
今日も電池切れ。