光とスイッチ

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「どこだどこだ。」 僕は静寂に包まれた暗い夜の町の中を必死になって走り回る。 でもそれが見つからない。 周りの家の窓からこぼれ落ちる光が疎ましい。 はやく自分の家の電気のスイッチを見つけなければ、そんな思いだ。 スイッチを見つけた後、僕はどうなるのだろう。 そう想像すると興奮している自分がそこにいた。 必死に走っていると、一つの公園にたどり着く。 何やら神々しい光がこちらの目を差し込むほどの強さで光っている。 そうだ。この光が探していたものなんだ。僕はその公園から出る光の中心に向かって歩いていった。 その光の中心に手を入れてみる。 スイッチがある。そう思った。 だがスイッチはそこにはなかった。 その光の中心はとても眩しい。ずっと見ていられず僕は背を向けた。 「そうか、やっぱり探しても見つからないものなんだ・・・。」 僕はそう諦め自分の足元を見た。そして前を見る。 すると光の中心からでた光が自分の体に当たって影ができていた。 その影にぽつんと何やら小さな白い物体が見える。 少しずつそこに向かって歩く。その物体が足元まで来ると、僕は拾い上げた。 何やらただの白い塊だったみたいだ。 だが僕はそこでなんとなくその白い塊を光の中心にかざしてみたいという気持ちが湧いた。 また、それを持って光の中心に向かって歩く。 そしておそるおそるその光にかざしてみた。 すると大きな音と共にその光が点滅し、その光と白い塊は消えた。 あたりは真っ暗になり、どこからともなく一筋の光が足元を照らす。 僕は目を凝らしてみる。何かが地面に落ちていた。 拾い上げると、それが自分の部屋のスイッチだということが分かった。 僕はやっと自分の部屋のスイッチを手にしたんだ。 その喜びとともに僕はそこで意識を失った。 僕は気がつくと電気の切れた自分の部屋で横になっていた。 ふと暗い自分の部屋の中でスイッチがある場所まで歩く。 僕はそのスイッチを探り探りで見つけると、電気をつけた。 パッと部屋が明るくなり、そこにはきれいなインテリアの視界が広がる。 このスイッチで見る景色と違うスイッチで見る部屋の景色は同じだろうか。 それぞれのスイッチにストーリーがあって、一人ひとりしか知らない物語なのである。 僕はそう思うと部屋の電気のスイッチを切った。 暗くなった自分の部屋の窓から見える公園の光がなんだか寂しく、ほそぼそと光っていた。
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