三色団子

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 校門を出た私は、髪とスカートを揺らす風が冷たいのに驚き、思わず身震いした。  4月に高校生になってから、無為に毎日を過ごしていたら、非情に、けれど平和に毎日は過ぎていった。何もリスクのある行動なんてとっていないから、平和以外に毎日が過ぎていくこともない。当たり前と言えば、当たり前。ただただ、平坦な毎日。    だから、急に三色団子を買いに行こうだなんて、普段は思わない。もしかしたら、彼の影響かな。三色団子が大好きだという彼の笑顔が、頭に浮かんでくる。頭をぶんぶんと横に振ってみる。なんとなく。  家の近くのコンビニまで歩く途中、通学路にはお墓の通りがある。そう遠くないところにお寺があるからだろうか。  通学路にあるお墓の通りは、暗くなってからはもちろん、昼間でもあまり好んで通られない。クラスの華やかな女子たちは、こっちのお墓の通りではなく、大通りの方をみんなで歩いて帰るのだろう。  突然、私の視界を埋め尽くしていたコンクリートの灰色に、明るく、可愛らしい色が飛び込んできた。ピンク色の菊の花が咲いていた。  お墓の通りの道端に咲いているというのに、可憐で健気に花びらを揺らしている。一年前の私は、この花のように、煌めいていたのかもしれない。けれど今の私は・・・・・・。今の私は、コンクリートの灰色だ。    お墓を見ると、決まって三年前に亡くなったおばあちゃんのことを思い出す。  「菊の花はね、仏花の代表格でもあるし、墓花としてもお供えするんだよ」  物知りで、いろいろなことを私に教えてくれた。菊の花についても。確か、お墓に飾る理由は、昔から日本人となじみがあるから。あと、長持ちするから。   ピンク色の菊の花に、にっこりと笑いかけてみる。そんなこと、何にもならないと分かってはいるけれど。  お墓を見て、思い出す人はおばあちゃんだけではない。もちろんあの人も・・・・・・。
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