三色団子

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 「・・・・・・こんなところで連絡事項は以上です。今週もお疲れ様でした。」  金曜日のHRがまた終わる。今週の学校がまた終わる。この「また」が毎週毎週繰り返されている。私は、本当にちゃんと生きているのだろうか。自分でもそう思ってしまうほどに、毎日代わり映えしない。毎週代わり映えしない。    「今日さ、駅前のカフェ寄っていこうよ! 今日から美味しそうな新作出るらしくて、前から楽しみにしていたんだ!」  「行く行く!」  遠くで固まって話している女子たちの明るく、そして高い声は、私の耳には周波数が追いつかない。  机の中から教科書数冊と筆箱をリュックに入れて、帰りの支度を終えた私は、ふと黒板を見た。  11月17日。黒板の右端に縦書きに書かれた日付は、地球上の誰かにとって、誕生日であったり、結婚記念日であったり、大切な日なのだろう。  そんな一日を、今日も無為に、またただの毎日の繰り返しと思って過ごしてしまった自分に嫌気が差してくる。  けれど、それも『ただの毎日の繰り返し』の一環になりつつある。  そういえば、『美味しそうな新作』を大々的に宣伝したいのなら、月の頭に初発売すればいいのに。私には関係のない話だけれど。  頭の中に、ある食べ物が思い浮かんできた。11月17日。その日付を見て、なぜかそれを無性に食べたくなってきた。懐かしい。彼がとても美味しそうに食べていたものは、コンビニにでも売っていた気がする。  代わり映えしない、ただの繰り返しの毎日に少しアクセントを加えてみる。それには少し掛け声が必要な気がした。  遠くで固まっている女子たちよりは全然小さい声だけれど。 「・・・そうだ、三色団子買いに行こう」
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