ふたりぼっち

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ふたりぼっち

七奈は自宅の整理をして、不動産会社に鍵を渡した。長年祖母那岐と2人で暮らした古民家だ。 業者が荒々しく、那岐の古いタンスや家具などをトラックに積み込んでる光景をみて七奈は目に涙を浮かべる。 次に一人暮らしするアパートには持ってはいけないと。七奈は玄関横の崩れそうなブロック塀の前にうずくまった。 七奈に友達と言える友達はいない。 自分が汚れた存在だと思っていた。 あの事件から、自分の心を捨ててしまった。 それは、生きる為に。 ひとりならとっくに自害していただろう。しかし祖母那岐の存在がそうさせなかった。 那岐は事件の話はほぼ言わなかった。 しつけもあまり厳しくなく、とにかく那岐は七奈を愛した。伝えた事は七色の話しのみ。 子供の七奈に何度も何度も伝えた。 そして、那岐は亡くなった。 七奈に生きる意味は無くなった。 本来自害してる人生を那岐のみが支えだったからだ。 七奈は引越し業者に鍵は開いてると伝え、荷物は適当に置いてくださいと、1人になった。 那岐と暮らした家にも辛くて居たくないが、新しい部屋にも行きたくないからだった。 場所ではなく、七奈の心がどこにも行くたくなかったからだ。 ジーンズのミニスカートにスニーカー、パーカーに襷掛けしたバッグのみで、駅に向かう。 夕日が落ちかけて、駅前の商店街をオレンジに染めた。惣菜屋や肉屋、八百屋は夕食の為に賑わっている。七奈はそれらを横目に歩いた。あの肉屋さんのコロッケとかパン屋さんのクリームアンパンとか、おばあちゃんがよく買ってくれたなと。 店の前に立ち止まるも、目から涙を溢れてきて走って商店街を後にした。 七奈は結局商店街の先にある、駅には辿りつかなかった。 着いた先は、雑居ビルの前だ。陽は暮れてきて七奈はまだ開店していないバーの前でしゃがみ込む。 お腹に違和感を感じて手を腹部にあてた。 反応はないが、生命がある事だけは理解した。 「あれ!七奈ちゃん」 聞き慣れた声はバーの店長三枝玲斗だった。 30代で頭はトルネードパーマ、スリーピーのスーツ。 眉毛をつりあげ、優しく微笑んだ。 「ちょっと、早いけど店はいる?」  身寄りも頼る場所もない、七奈は促されるように二階のバーに三枝と入った。 三枝は七奈の全てを知っていた。 事件の事も、お腹に宿した子の事も。 「七奈ちゃん、身体に悪いからソフトドリンクにする?」 七奈は何も言わずうなづいた。 オレンジジュースを一口飲み沈黙が続く。 「あいつ、本当クソやろうだよね」 三枝が開店準備を終えて、七奈の前に立つ。 七奈のお腹の子は前店長小路の子であった。 おろせと金もださず、さらに七奈に話があると自宅に呼び出し強姦した。 「あいつ、また2号店で女捕まえたらしいよ。七奈ちゃん辛い事あったらなんでも言ってよ」 三枝が頭をかきながら照れ笑いした。 「わたし、産もうと思うの」 三枝は目を丸くした。 「そうか、七奈ちゃんがそう決めたなら良いけど。 まだ21才でシングルマザーか」 七奈は何杯かオレンジジュースを飲み、目のまわりがグラグラしていた。那岐の死や引越しの事で疲れたせいかと。 最後にオレンジジュースを飲み欲して、席を立とうとした瞬間自分が倒れる風景だけが記憶にあった。 もの凄い頭痛で七奈は目を開けた。 見慣れた風景は、バーの奥席のボックスシート上にあるライトだった。 肌寒さを感じ、胸元に手を置くと半分おろされたブラ、下を見ると捲し上げられたスカート、パンツは床に乱雑に捨て去られていた。 横のボックスシートには下半身だけ裸の三枝がスマホをいじっている。 「起きたの?付き合う?とりあえず店開けるから帰ってね」と優しく微笑んだ。 膣から生暖かい精液がどろりと出て、七奈は凍りついた。
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