0人が本棚に入れています
本棚に追加
謎のバス
観光バスでなく、市営バスのように運転手側の扉と側面中央の入り口があった。運転手側のみ扉が開く。
七奈は神社の階段の1番下に座り、その光景を見ていた。白のボディにラインが入るよく見るバスである。ただその横ラインが七色のレインボーカラーで、七奈はそこにだけ意識を取り戻した。
おばあちゃんの色だと。
脳内では、那岐の鶴の話しが駆け巡る。
現実に戻り、また七奈の心に痛みと自己否定が支配した。
血で固まった黄色いカッターを目の前で見た時、バスの入り口から声がした。
「出発します、早くご乗車ください」と。
バスの乗降口から、シルバーアッシュでタイトな紺色の制服を着た女性であった。
七奈は少しの間フリーズするも、その女性の元へ歩いていった。
「さあさあ」と七奈はバスに乗せられると扉は閉まる。
中は市営バスというか、新幹線やグリーン車のようにボックスシートであった。
少ない乗客者の合間をぬって、七奈はだれもいないボックスシートに座る。
窓際の席から外を見た。神社の階段の下には、黄色いカッターが置かれている。
「あ」と言う七奈の声と共に、バスは発車した。
バスとかカッターとかどうでもいいんだ。
と七奈はふさぎこむ瞬間、横から何かの気配を感じた。
一瞬、目を疑った。血で固まった手で何回か目擦りをしたがそれは幻覚でなかった。
「つ、鶴⁈」
思わず七奈は言葉に出した。
七奈の横に座ってきたのは、鶴であった。
鶴は生物的な鶴ではなく、アニメに出てきそうな二次元の風貌でそこにいた。
七奈の顔をチラ見するが、鶴は何事もないようにまた前を見た。
外を見るといつもの街の風景で、とにかく席を変えようと七奈が立ちあがろうとした瞬間アナウンスが流れる。
「次は、赤い停留所。次は赤い停留所」と。
最初のコメントを投稿しよう!