悲劇のヒロイン劇場

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『もうちょっとだけ、ね』 「もうちょっとだけ?」 『それでだめだったら、やめたら?』 「そうかな?」 『うん、そうだよ』  涙が出なくなるまで、ソファの上にころがって、目を閉じていた。いつの間にかうとうとして、浅い夢を見た。  夢の中には、だれか懐かしい人が出てきたような気がするけれど、よく思い出せなかった。  この部屋は朝まで使えることになっている。このままここで寝てしまってもいい。  服も着替えず、顔も洗わず、出勤したっていい。  ここを出た後のことは、後で考えたらいい。私は、もう一度、目を閉じた。
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