悲劇のヒロイン劇場

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おにぎりのビニールをむいて、口に押し込みながら、左手でカードキーをスクリーンの下の差込口へ差し込むと、目の前のスクリーンがゆっくりと明るくなった。 缶チューハイを、ちびちびと流し込む。こんな、味気なくてわびしい夕食も今日の気分に似つかわしい。 スクリーンに、色白で線の細い華奢な女の子がうつる。美夕ちゃんだ。実際の私の容姿からはずいぶんかけ離れているけれど、彼女が私の役を演じてくれる。 美夕ちゃんのきれいな肌には、うっすらくまがみえる。唇をきゅっと結んで、パソコンに向かい、淡々とキーを打つ。 「さくらさーん、これ、お願いできますか?」 「さくら」は、私のここでの名前。 後輩のユミコちゃんは、念を押すように、しっかりとさくらの目の中を覗き込む。この間ミスしたのと同じ書類だから。 「あ、わかった。うん、やっておくね」  さくらは、笑顔で書類を受け取り、パソコンに向かって、小さなため息をつく。 私が書いた問診通りに、さくらに次々と厄介な出来事が襲いかかる。美夕ちゃんは、気持ちを押し殺し、笑顔で対応する。
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