悲劇のヒロイン劇場

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電車に揺られてやっと家に帰りついたさくらは、疲れ果てた表情でスマホの着信をチェックする。待っていた彼からの連絡は、今日も来ない。ため息をついてスマホをベッドに放り投げ、温かいものを飲もうとキッチンへ向かう。マグカップを取り出してティーバッグをいれ、ポットのお湯を注ごうとしたとき、ベッドの上のスマホが鳴る。 慌てて振り返るさくら。ひじがカップにあたることにも気が付かない。あっ、と声を上げたときにはもう遅く、カップはスローモーションで床に向かって落ちていく。一人暮らしを始めたときに、お母さんが買ってくれたものだ。 がしゃん、と鈍い音がして、取っ手がとれたカップが、画面に大写しになる。 呆然と立ち尽くす、さくら。スマホはしばらく無機質な呼び出し音を流した後、静かになる。 無表情に、床を片付け終わったさくらは、ベッドに戻り、スマホの画面をのぞき込む。そこに残っているのは、待っている彼ではなく、仲がいいふりをしているけれど本当は苦手な同僚の名前。 とうとう、さくらは、耐えきれなくなって、ベッドに身を投げ出してしくしくと泣き出す。 それに合わせて、私の涙腺も崩壊する。
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