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「なんで私だけ、こんな目にあうの。なんで、嫌なことばっかり。もう嫌だよ、こんなの嫌だよ」
子供みたいに、声をあげて、さくらは泣く。
気が付くと、私もつられて泣いている。ソファの上で膝を抱えて、自分の体を抱きしめながら涙を流す。誰も見ていないし誰に気兼ねすることもない。声をあげて泣いていると、そんな自分によいしれてさらに涙が止まらなくなる。
初めてここへ来たとき、ワーワーと声をあげて泣く自分に、驚いているもう一人の自分がいた。大人になってからこんなに身も世もなく泣いたことなんてなかった。
高校生活最後の試合で惨敗したときも、初めての恋が終わったときも、自分には責任のないことで上司から怒鳴られたときも、枕に顔をうずめて声を殺して泣いた。
スクリーンの中でさくらが一緒に泣いてくれることで、私の中で積もり積もっていたものが、優しくなだめられていくような気がする。
それでいいんだよ、よく頑張ったね。いっぱい泣いていいんだよ。肩の力を抜いて、もう頑張らなくていいんだよ。
さくらの泣き声は、いつしかそう言って優しく背中をなでてくれる誰かの手に代わっている。
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