2人が本棚に入れています
本棚に追加
心ゆくまで泣いて、しゃくりあげながら目を上げると、画面の中のさくらも、ちょうど顔を上げるところだった。部屋の窓から、うっすらと朝日が差し込んでいる。
さくらは、腫れた目で朝日を見つめる。私もその背中越しにオレンジの空を見る。
どんなに泣いた夜も、朝はくる。それは、やっぱり美しい……
スクリーンが暗転しても、部屋は薄暗いままだった。映画の中では朝が来ても、今はまだ夜で、ここは窓のない地下室だ。
「つかれたな……」
ここの映画には、明るい未来は映し出されない。
「もう、いいかな……仕事、やめちゃおうかな……」
つぶやくと、もう一度涙があふれてきた。
「別れちゃってもいいかな……別に、ひとりでも、いいかな……」
涙をぬぐいもせず、そのまま流し続ける。スクリーンは暗転したままで、この先の私の道行きを示してはくれない。
「どうかな?」
暗いスクリーンの中のさくらは、答えてはくれない。
「どうしようかな……」
心の中の、もう一人の私が、答える。
『いつでもやめてもいいよ。だから、もうちょっとだけやってみたら?』
「そうかな……」
誰もいない部屋の中で、涙を流れるままにして、私は私と会話する。
最初のコメントを投稿しよう!