悲劇のヒロイン劇場

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心ゆくまで泣いて、しゃくりあげながら目を上げると、画面の中のさくらも、ちょうど顔を上げるところだった。部屋の窓から、うっすらと朝日が差し込んでいる。 さくらは、腫れた目で朝日を見つめる。私もその背中越しにオレンジの空を見る。 どんなに泣いた夜も、朝はくる。それは、やっぱり美しい……  スクリーンが暗転しても、部屋は薄暗いままだった。映画の中では朝が来ても、今はまだ夜で、ここは窓のない地下室だ。 「つかれたな……」  ここの映画には、明るい未来は映し出されない。 「もう、いいかな……仕事、やめちゃおうかな……」 つぶやくと、もう一度涙があふれてきた。 「別れちゃってもいいかな……別に、ひとりでも、いいかな……」 涙をぬぐいもせず、そのまま流し続ける。スクリーンは暗転したままで、この先の私の道行きを示してはくれない。 「どうかな?」 暗いスクリーンの中のさくらは、答えてはくれない。 「どうしようかな……」 心の中の、もう一人の私が、答える。 『いつでもやめてもいいよ。だから、もうちょっとだけやってみたら?』 「そうかな……」 誰もいない部屋の中で、涙を流れるままにして、私は私と会話する。
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