挨拶

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 何気なく目についた公園に入ってベンチに腰を下ろした。 「もうちょい暗かったらなー」 「何?」 「エッチ出来そう」 「こんなとこでできるか」 「あそこの茂みとか木の影とか。ここでもさ俺の膝にりとが座ったらさ、わからなさそうじゃない?」 「分かるだろ。ズボン降ろさなきゃ入んないし」 「りとに触りたい」 「まぁ、僕もだけど」 「じゃあやる?」 「やらない」 「チェッ。来週俺の家来て」 「いないの?」 「いるけど、絶対にバレないから」 「そうだ、一緒に勉強しよう」 「は?」 「後ろめたいことするから、後ろめたくない事もしたほうがいいかと思って」 「エッチしてくれんの?」 「勉強するなら」 「分かった。そういやさ、学校でいいとこ見つけたんだよ」 「いいとこ?」 「エッチできるとこ」 「須藤、お前の頭の中はそれしかないのか?」 「うん。りととやることしか頭にない」 「体目当てみたいで嫌だな」 「しょうがないじゃん。健全な男子だもん」  そう言われると自分も同じだったりするから何とも言えない。 「どこなの?」 「将棋部の部室の近く」 「将棋部?」  どこにあるんだろう。将棋部ってそもそもあることも知らなかった。 「調理実習室の近くにあるんだけど、知らない?」 「うん、知らない」 「そうなんだ。将棋部じゃなかったら知らないのかな」 「須藤は将棋部なのか?」 「そうだけど」 「初耳だ」 「まぁ、幽霊部員だけどな」 「なぜ将棋部に?」 「1年の時にメガネ先輩が勧誘しててさ。誰にも見向きされてなくて可哀想になったから声かけたら頼み込まれて仕方なく?」  須藤って困っている人を放っておけないタイプだな。ファッションショーのときもそんな事を言っていたし。 「ふーん」  それにしてもメガネ先輩って何者なんだろう。3年生なのかな。仲良いのかな。 「めちゃくちゃ良い人なんだよねー」 「へー」  良い人なんだ。須藤が褒めるのは何か嫌だ。 「ふふふ」 「何だよ」 「ちなみにメガネ先輩があさひさんの彼氏。俺がキューピッドなの」 「キューピッド?」  沈みかけた気持ちが浮上する。 「メガネ先輩が家庭教師探してるのを聞いて紹介したらさ、あさひさんが一目惚れして口説き落としたの」 「すごい、そんな事があるのか」 「安心した?」 「え?」     「りとって結構わかりやすいよな」 「どういう意味?」 「メガネ先輩の話し出したら急に落ち込んで、あさひさんの彼氏って言ったらめちゃくちゃ嬉しそうな顔するからさ。俺りと以外興味ないのに」 「今はそうかもしれないけど、過去は分からないじゃないか」 「りとが心配するようなことは何もないよ。でさ、話戻るんだけど……」     それから、たまに休憩しに行くという部室の近くの空き教室からいかにもやった後みたいな人達を見かけて、鍵もかかるし人もあまりいないからめちゃくちゃいいじゃんって思ったという話を聞かされた。   「みんな普通にやってるのか?」 「やってるんだよ、りと。だから俺達もしよ?」 「フハ、必死だな」 「悪いかよ」 「悪くないけど」 「りとと一緒に暮らしたらさ、毎日できるのにな」 「毎日は無理だろ。結構腰が痛くなるんだからな?回数制限する」 「えー、マジ!?隣で寝てるのにできない日があるの?」 「あります。別々に寝るし。学生なんだから勉強に支障をきたすわけにはいかないだろう?」 「真面目りとちゃんだ。別々は却下な」 「えー、一人で眠りたい日もあるだろう?」 「ない。絶対にない」 「まぁ、まずは合格しないといけないからな」 「だな。何かお腹すいた」 「ご飯食べて帰る?」 「そうだな」  立ち上がる須藤の隣に寄り添って歩く。二人で思い描く未来が早く来てほしいと心からそう思った。
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