クリスマス*

1/3
前へ
/42ページ
次へ

クリスマス*

 修学旅行を終えて期末テストも無事に乗り越え、街にはクリスマスムードが漂っている。初めて二人で過ごすクリスマス。二人でご飯を食べてプレゼント交換して……そう、プレゼントだ。  という事で最近は須藤に贈るものをずっと探している。恋人に贈るものと検索してはサイトを片っ端から見ているけれど決められない。 「クリスマスさー」 「ん?」 「親いないんだよね」 「へー」 「泊まりに来て」 「大丈夫なの?」 「何かすごいお膳立てされてる気がする」 「須藤のお母さんに会うのどんどん気まずくなるんだけど」 「まぁ、いいんじゃない?いっぱいしような?」 「ファミレスでそういう事を言うな」 「何を想像してるんですか?」 「なっ……」 「赤くなった。やらしいなぁ、りとちゃんは」 「何もしないからな」  悔し紛れにそう言うと「我慢できなくなるくせに」と言ってニヤニヤ笑われた。本当に拒んでやろうかな。そうしたら須藤はどうするんだろう。想像してみるけれど、組み敷かれる姿しか浮かばない。 「楽しみだな、クリスマス」 「そうだな」  そして、やってきたクリスマス。昼ご飯を食べた後、街をブラブラして輝くイルミネーションとクリスマスツリーを二人で眺めた。  夜は家で食べる事にし、チキンとパーティセットを買った。もちろんクリスマスケーキも購入済みだ。 「お邪魔しまーす」  誰もいない静まり返った空間に僕の声が響く。 「寒い。早く入ろう」  部屋に入って、テーブルの上に買ってきた物を並べる。須藤がスマホでクリスマスの音楽を流してくれた。ささやかだけど、二人きりで過ごすこの時間が幸せだ。美味い美味いと言いながらペロリと完食して、二人で後片付けをする。 「りと、ケーキは?」 「もう少し後でいい」 「じゃあ先にりと食べていい?」 「先にプレゼント交換だろ?」 「俺はりとがほしいな」 「後であげるから」 「言ったな?めちゃくちゃ食べてやるから」 「めちゃくちゃって……」 「プレゼント取ってこよー」  軽率にあんな事を言って、僕大丈夫かな……。 「どっちから?」 「せーのにする?」 「うん」 「「せーの」」  お互いに紙袋を手渡して交換した。 「一緒に開ける?」 「うん」  袋の中を覗くとラッピングされた袋が2つ入っていた。まず一つ取り出してリボンを解く。 「わぁ、マフラーだ」  毎日使っているから嬉しい。チェックのマフラーを手にとって首に巻いてみる。 「どう?」 「似合う。使ってくれる?」 「もちろん。毎日つける」 「俺も開けてみよ。……あっ、ピアスだ」 「どんなのがいいか迷ったんだけど」 「気に入った。りとつけて?」 「やだよ。何か怖い」 「大丈夫だって」  つけていたピアスを外して、プレゼントしたピアスを手渡された。ピアスなんてつけたことがないから怖い。でもこれはつけないといけない雰囲気だな。恐る恐るピアスを手にとって、須藤の耳に触れる。 「耳たぶを引っ張たらやりやすいよ」   「分かった」  耳たぶを引っ張ると穴が広がったように見えた。ピアスの針を慎重に差し込んだ。 「はぁ――緊張した」 「息してよ。はい、こっちも」 「よし」  さっきと同じ要領でもう1つの耳にもピアスを差し込んだ。 「僕が選んだピアスをつけてるの嬉しい」 「似合う?」 「似合うと思う」 「ありがと」 「もう1つはなんだろう?」 「りとももう1つあるよね」  取り出して袋を開ける。 「「あっ……」」  中に入っていたのはペンケースだった。そして、僕がプレゼントしたものもペンケースだ。 「りともペンケースじゃん」 「同じだった」 「毎日使ってるしな」 「うん。受験の時もこれを持っていってくれたら良いなと思って」 「俺も同じ事思った」 「何か嬉しい」 「勉強一緒に頑張ろうな」 「須藤の口から勉強に対する前向きな発言が飛び出すとは」 「りとと同じ大学行きたいもん」 「須藤がいてくれたら、より頑張れる」 「俺も。やっぱりりとの存在は大きいよ」  須藤と同じ大学に行く。須藤も同じ目標を持ってくれていることが嬉しい。 「早くケーキ食べよ?」 「うん、いいけど」 「早くエッチしたいし」 「もう、またそれかよ」 「だってりととエッチすんの気持ちいいんだもん」 「じゃあ食べよ」  冷蔵庫からケーキを取り出してお皿に盛り付ける。須藤はいちごのショートケーキ、僕はチョコケーキにした。須藤が淹れてくれたコーヒーと一緒にケーキを食べる。 「おいしいー」 「はい、あーん」  口を開けてショートケーキを一口もらう。 「こっちもおいしいー」 「ほんと好きだな」 「うん。大好き」 「太らないから不思議」 「一応筋トレはしてるし」 「なるほどね」  ケーキを食べ終えて、残っているコーヒーに口をつける。隣からの早くしろという圧がすごい。コーヒーを飲み干してカップを置くと「片付けはまた明日な」と言われて立ち上がるように促されて、手を引っ張って須藤の部屋に連行された。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

699人が本棚に入れています
本棚に追加