はじまり

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 授業が終わり帰り支度をしていると一人の女子生徒に話しかけられた。 「海堂くんって須藤くんと付き合ってるの?」 「え……まあ、うん」 「私の友達が告白した時誰とも付き合う気はないって言われたって聞いたけど?」 「ちょっと気持ちが変わって」 「そうなの。友達ショックを受けてるからあんまり見せつけるような事しないでくれない?」 「ごめん、気をつけるよ」  アイツのせいで怒られたじゃないか。確かに誰とも付き合う気はないと言って振っといて、ああいう姿を見せられたら嫌になるか。はぁ、もう大人しくしてもらうように言おう。  教室を出ると須藤が待っていた。 「ごめん、おまたせ」 「さっきの女、何?」 「ああ、前に告白してきた子の友達。あまり人前でベタベタするのはやめないか?一緒に歩いてるだけでもアピールにはなると思う」 「なんか言われた?」 「別に」 「ふーん」 「一緒に帰るのって駅まででいいよな?」 「家まで送るけど」 「は?何言ってるんだよ。送るとかいらないから」 「心配だし。振った女達に恨まれてるかも」 「怖いこと言うなよ」 「な?だから送ってやる」 「えー」 「ほら行くぞ?」  当たり前のように手を差し出してくるんじゃない。ため息をついてその手を取った。 「もう、ここでいい。ここから近いから」 「ご挨拶しなくていいか?」 「しなくていいに決まってるだろう」 「アハハ、じゃあまた明日」 「あぁ」  彼と別れて家に入った。 「ただいまー」 「おかえりー」  靴を脱いで母がいるキッチンへ向かう。弁当箱を出して水につけておく。 「今日も美味しかった。ありがとう。友達にもちょっと分けてあげたんだけどさ、美味しかったって」 「理仁がお友達の話するの珍しいわね」 「そうかな」 「じゃあ明日も頑張って作らなきゃ」 「よろしくね」  手を洗って部屋に入り、制服を脱ぐ。部屋着に着替えて、いつものように勉強を始める。  さっき母を喜ばせようと思って言ったこと、よく考えたら今までしたことないな。あんな噂があるから仲がいいと言える人もいない。一人で過ごすことが当たり前になっていた。仮の恋人も悪くないかもな、少しだけそんな事を思った。
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