ご両親に挨拶!?

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ご両親に挨拶!?

 ファミレスでいつものように昼ごはんを食べている時だった。 「りとちゃん、お願いがあるんだけど」 「断る」 「まだ何も言ってないけど」 「嫌な予感がする」 「いやいや、ちょっとしたお願いだって」 「本当に?」 「うん。ちょっと俺の親に会ってくれればいいだけ」  パスタをフォークに巻き付けながらこともなげにそう言った。親に会う……? 「はぁ!?親に会う?それはどういう立場で?」 「そりゃ恋人として」 「だよな」 「お願い」 「無理無理。ご両親の前で演技なんてできないよ」 「そこをなんとか」 「どうしてそんな事になったんだ?」 「付き合ってる人いるから婚約者はいらないって言ったらさ、母親が会いたいって言い出してさ」 「うーん、なるほど」 「ちょっと顔見たら満足すると思うし」 「うーん……」  親に会うって何だか大事じゃないか?そんな事はないのか?? 「甘いもの好きだって言ったらケーキ買っとくって言ってた」 「ケーキ?」  思わず反応した僕に須藤が畳みかける。 「そうそう、ケーキ。りとちゃん好きだろ?食べ放題だぞ?」 「食べ放題……って他所様の家でそんながっつけるか」 「あー、ケーキで釣れると思ったのに」 「釣るな。まぁ、行ってやってもいいけど」  ケーキに惹かれた訳ではない。少し興味が湧いたからそう話すと承諾すると思わなかったのかキョトンとした顔をした。 「あれ、そうなの?」 「いつもと同じ感じでいいなら」 「ありがとう、マジで助かる」 「何着ていったらいいんだ?制服?」 「いや、普段着でいいよ。今日あげたやつ着てきて?」  チラリと隣に置かれた紙袋を見る。この男はまた服を買って僕に渡してきたのだ。「須藤が着ろ」と突き返したが「りとのサイズじゃ俺入らない」と悲しい事を言われて渋々受け取った代物だ。  「分かった」  そう言って頷くと須藤は嬉しそうな顔をして笑った。  友達の家に遊びに行くと思えば何とかなるだろう。そんなに根掘り葉掘り聞かれないだろうし。須藤のご両親がどんな人なのか気になった。お父さんは大病院の院長だし怖かったりするのだろうか……。ケーキを食べる余裕があるか若干心配だ。
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