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前に一緒に帰った日から数日が経って、敦矢と私は、また肩を並べて微妙な隙間を作って歩いていた。
今日は雨予報だったため、敦矢は歩きだ。
「天気予報はずれだね」
「だな…」
私は自己防衛のため、敦矢側にサブバッグを持った。
うっかり近づいちゃって、また拒絶されるなんてことがあったらもう耐えられない。それなら最初から壁があった方が心中穏やかにいられる。
一緒にいるのになんだか遠くにいるみたいだ。
カレカノなのに…こんなの変だよね…
そんな私の気持ちを察したらしく、敦矢が「愛依、なんか悩みごとでもあるの?」と私の顔を覗き込んだ。
私は「何もないよ」と顔を背けた。
敦矢は「何でもないことないでしょ…言ってよ」と続けた。
私の張りつめた心の糸は、敦矢のその一言でプツリと切れてしまった。
敦矢からそっぽを向いた先の空き地の景色がみるみる霞んで、喉の奥に大きな異物がつかえたような感覚に襲われる。
私は「何でもないっ!先帰る」と言い捨てて駅までの道を走った。
「え!?愛依?待ってよ…」
私は敦矢にすぐに追いつかれて、手をつかまれた。
こんな形で手を握って欲しかったんじゃない…
握られた手に敦矢を感じて苦しくなった。
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