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 「ねぇ、俺なんかした?」    敦矢の汗ばんだ手に、ギュッと力が入った。   私はブンブン頭を横に振った。  敦矢は何もしていない。  むしろ、何もしてくれないことなんだよ敦矢…  「言ってよ、言ってくれないと俺、わかんないから…」    敦矢はそう言って、私の両手をつかんで真剣な顔で私を見つめた。  額には汗の粒が浮いていて、いつもクールな敦矢の必死な様子に私はなんだか胸がキュンと締め付けられた。  言ってもいいのかな…  ワガママだと嫌われないかな…  面倒くさい女だって思われないかな…  なんだそんなことって笑われるかな…  そんな思考がぐるぐると頭の中を巡った。    「わ、私たち付き合って二カ月になるよね…」  私は思い切って口を開いた。  敦矢は「うん…」と相槌を打って、私の言葉の続きを待つ。  「…どうして、手つないでくれないの?この間は近寄ったら露骨に嫌そうにして離れちゃうし…本当は付き合うの嫌だった?もう、やめたい?」     本当はこんなこと言いたくない。  自分からこの関係を終わらせるようなことは言うつもりなんてなかったのに…  一度開いた私の本音の蛇口は、慌てて捻っても簡単には止まってくれなかった。  言葉とともに、私の目からはポロポロと涙が零れ落ちた。      
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