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彼氏の敦矢とは、付き合い始めてもう二カ月になる。
それなのに、ちっとも恋人らしいことができていない。
そういう雰囲気にならないから?受験生だから?
敦矢に「付き合って」って言ったのは私だし、本当は私のことなんて好きじゃなくって断れなかっただけ…?なんて時々ネガティブなことを思ったりもするけど、それでもやっぱり私は敦矢のことが大好きだから、彼女のポジションは絶対に誰にも譲ったりはしない。
だけど、手をつないだり、その先のことを自分からするなんてことは、敦矢が初彼の私には難易度高すぎて無理…
「ねぇ、愛依のとこはもうチューした?」
「夏休み前に付き合い始めたから、そろそろいい感じなんじゃないの?」
体育の授業の後の更衣室で凪咲と華乃が私にそう聞いてきた。
「チュチュチュ…」
ついさっきまで「もう九月なのに暑いー…」「残暑ざんしょ?」なんてバカみたいなことを話していたから完全に油断していた私は、突然の問いかけにしどろもどろになった。
「センセイ!ここにネズミがいまーす!」
いち早く着替え終わった華乃が、ハンディファンで汗ばんだ前髪を乾かしながら私をからかう。
「ちょっと、からかわないで華乃…今、真面目な話だよ」
凪咲がニヤニヤしながら「それで、どうなんですか愛依さん…彼とはどこまでいったんですか…」と、マイクに見立てた拳を差し出す。
「どうもこうも…」
私はしょんぼりして、凪咲のインタビューを拒否してマイクを遠ざけた。
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