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Ep01:異国の地
私のせいで電車が止まり。
多くの学生が学校に遅れ
会社勤めの人達は会社に遅刻。
目的のある人達は目的が果たせず
何もない人なんて乗ってはいない。
まぁ遅延証明が出れば問題ない人もいて
もしかしたら命が掛かってる人もいる。
そんな事をまだ気にしながらも
電車がホームに入ってくるのを見て
私は線路に落ちていく。
ゆっくりと人混みの中から
飛び込むようにゆっくりと....
『危ない!』
誰、私の腕を掴み
私の命をまだ救おうとする人は
危ないじゃないか
落ちるところだろ
死んじゃうぞ。
落ちるところでなく
自ら落ちようとしていたのに…
死んでしまおうとしていたのに…
それが始まりだった。
いいから来い
彼に腕をとられ
無理やり連れて行かれた。
ホームの一番端の人に居ない
ところまで連れて行かれた。
何故自分の命をそまつにするんだ。
知っていたんだ…
自らの行動だった事を
色々叱られ説教などされているけど
私の耳には入ってこない。
もう、生きる事も無駄だと悟った。
自分には何を言われても
あなたは私の辛さを知る事もない。
たかが失恋だと言われても
また、新しい恋をすればいいなど
慰めにもならない。
昨日までの自分がついさっき
全てが否定されてしまった。
悲しさなんて誰にもわからない。
道に倒れて男の足を抱きしめ
行かないでと、人前でも泣くことが
平気で出来ても何も変わらない。
だから...おねがい
あっちに行って。
私に構わないでお願いだから
誰かと話しできるわけがない。
言葉を聞くこともできない
だから、目の前から消えてほしい。
消えないなら
「ねぇあなた一緒に死んでくれる」
いいよ
俺でよければ
それでお前が救われるなら
死んでやるよ。
そんな安請け合いしない方が
あなたの身のためよ。
ほら、来い
一緒に来い
腕を掴んでぐいぐい私を、引っ張る。
気が付くとビルの屋上の縁に
彼は立っていた。
黙って見ていると
こっちに振り返り、わたしを見て微笑み
そのまま、後ろに落ちていった。
思わず、声が出た!
慌てて走りビルの上から
下を覗き込んだ。
だけど、彼の姿も
落ちた後、血の跡も、
はるか下の道にはなかった。
私は何を見ていたんだろう。
まぁいいか、一緒にと言ったから
ここから私も飛び降りよう
ちょうどいい場所に連れてきてくれた。
私はビルの縁にのぼり、立った。
落ちる前にぐるりと一周見渡し
天を仰ぎ、眼をあけ手を広げて
空に飛び込む。
しかし空を飛ぶことは出来ず
私の身体は真っ逆さまに落ちていく。
よくいう、落ちていく僅かな時に
「何か走馬灯のように」なんて嘘
私の身体は一瞬で落ちていった。
目が覚めるとそこは絵画にあるような
楽園のようなところ。
死んだらこんな世界に来れるのかと...
お花がたくさん咲いてる道を
歩いていくと、扉があって
どこかで会った男の人が立っていた。
『こんにちは』
私はジヴァです
あなたのお世話をさせて頂きます。
••もしかして私の記憶がおありですか?
はい、もう少し若かったようですが
あなたに似た人に叱られたような…
ただ、はっきりとした記憶ではなく
断片的に私に入ってきます。
夜の稲光のように音もなく
記憶が目に映ります。
そうですか、本来転生は
以前の記憶はなく
真っ白な状態で致します。
大変めずらしい事でございます。
ならば先程は無礼な言葉を使い
申し訳ございませんでした。
「転生?」
ここはどこなの?
あなたの心の世界です
思いどおり自由に出来る世界です。
風を吹かせたければ風がそよぐ
雨を降らせたければ嵐にも
貴方様は転生して
聖女様となり異世界に召喚されたの
でごさいます。
今あなたは聖女様でございます。
「聖女?」
扉の向こうの国をあなたの力で
どうかお助け下さい。
今、べクルクス王国はカシオン帝国に
侵攻され、危機にさらされており
一刻も早く
国王に聖女様をお連れするように
命を受けました。
こうして
ピッチカート様をお連れできるのは
まことに嬉しゅうございます。
「ピッチカート?」
私の名前は
この世界ではピッチカートと言うの?
そうでございます
あなた様は
『聖女ピッチカート』様でございます。
さぁさ、扉の向こうの世界
べクルクス王国へ参りましょう。
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