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「ずっとバイト入ってるし無理。ごめんね」
(嘘だけど)
「じゃあバイト休みの日はいつ?」
「まだシフト決まってないから分からない」
(嘘だけど)
「決まったら絶対教えてよ」
歩幅を合わせて並んで歩く多賀くんを、ちらりと横目で確認する。この人はいつまで横にいるんだろうか。
「岩槻さん、今日元気なかったよね。ボーッとしてた」
「別に。普通だけど……え!」
急に手を掴まれてびっくりした。背筋がゾワゾワする。離そうと手を振ってみたけど離してくれない。
「ちょっと、離してよ」
「岩槻さんって、めっちゃタイプなんだよね」
全然離してくれない。逆により強く握られて恐怖を感じた。
「好きな子が元気ないから、元気づけたかっただけだよ」
嫌だ、怖い。怖くて身体が震える。どうしよう!
「別に彼氏いないんでしょ。オレと付き合ってよ」
それだけは絶対にありえない。私は頭を必死で横に振った。
「なんだよ、オレの気持ちを弄んでんの?」
「そういうわけじゃないけど、無理だから!」
「無理ってなんだよ」
そういうところだよ! と言いたいのをグッと抑えて、なんて言えばいいのか、脳内フル回転で言葉を探す。
「す、好きな人がいるから、無理!」
「は? ……なんだよ、萎えるわ〜」
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