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ホゥホゥホゥ――とどこかの梢で梟が鳴いた。次いで聞こえてきた羽音にはっとして、遠くへ手放してしまっていた意識をかき集める。
「佐羽」と呼んで美羽が手を伸ばす。「美羽」と呼んで佐羽が手を握り返す。
こんもりと柔らかく積もる掘り出した土に足元を埋められて、私たちはそのすぐそばに眠る死体を見つめた。
――掘り出した死体には、両方とも足が無かった。
がくん、と体がくずおれ、上体が傾いで土の小山に倒れ込んだ。足の感覚が失せたのだ。
「……ぐぅっ」
私たちは呻いて、口の中に入った土を吐き出した。地面に突っ伏した体勢のまま、這いつくばって死体の穴の縁に顔を寄せた。
穴の中の少女は、まぶたを閉じてもらうこともなく横たわっていた。命の灯りを失くした瞳はすでに虫たちに喰われたのか、墓穴によく似た昏い洞があるばかりだった。
その、視線すらも合わせようがない少女は――
「美羽」
「佐羽」
――私ではなく私たちのどちらかではなく。
「……っこの!」
同時に互いの顔に目をやった瞬間、抑えようのない感情が湧きあがった。
ぎりりと互いの肩をむしるほどの力で掴んで「くそっ、この!」と中身のない罵倒を口にした。
お前が埋まっているべきだったのに! と言ってやりたくて、だけどできない。
「……くぅっ……」と零れたのは泣きだす前のかすかな吐息。
片方の手を握りしめ合い、片方の手で掴み合い、傷めつけ慈しみ合いながら、私たちは地面に倒れたまま嗚咽をもらした。
――ああ。そうだ。
美羽なんていなかった。
佐羽なんていなかった。
私たちは穴の縁に寄って、無造作に埋められていた少女に向けて涙をこぼした。
「……可哀そうな羽衣」
「私」はずっと、ひとりだったのだ。
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