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第6章 7 ~終焉のとき~
涙で見送った真代だったが、いつまでも感傷に浸ってなどいられなかった。光子の力が押され、凄まじい殺気が周囲を覆い始めていたからだ。
「何故だっ! なぜいつも私の邪魔をするっ!」
少女たちが消えたことで、鏡子は初めて動揺と焦りを見せた。そして徐々に力が暴走するのがその形相にも現れる。顔に赤黒い網状の血管が浮き出てきたのだ。
「鏡子、もうやめなさい。……これ以上、何をしても無駄なのよ」
「うるさい! うるさい! うるさいっ!」
光子が消えかけている。
真代が光子の横に立ち並び手鏡を向けると、青白く刺すような光が鏡子を照らした。
「ぎゃあああ」
真代は語りかけた。
「遺魂の海に来るだけでも相当な霊力を消耗するのよ。それなのにあんなに大勢を引き連れて、しかも実体化までするなんて。一体どれだけの霊力があったら出来るのよ。見てきた今でも信じられないわ。だけど、いくらあなたでもそんな無茶な力の使い方をしたら、その後どうなるのか考えなかったの?」
見る見るうちに鏡子は年老いていった。艶やかな黒髪は縮れて白くなり、背筋が前屈みになる。
「かわいそうな人。今でも暗いトンネルの中で一人、もがき苦しんでいるのね」
水晶玉の光がオレンジ色に変わり、鏡子を包み込んだ。
「……や、やめ……ろ」
皮膚が皺だらけになり、さらに腰が曲がり背が縮むと、藤田幸恵を名乗っていた時よりも年老いた老婆になった。
「確かに神忽那家の過ちは簡単に償えるものではないわ。でもね、あなたは余りにも多くの命を奪ってしまった。その罪からも逃れられないのよ」
「……お、お前に、何が……分かるっ!」
強風が襲いかかった。しかし真代は、一歩後退りしながらも声を大きくした。
「彼女たち一人一人にだって幸せがあったのよ。家族がいて一家団欒の中で笑い合って。やがて誰かと恋をして、そして新しい家庭を持って……。そんな幸せをあなたに奪う権利なんてないのよっ!」
「おおおお……魂……喰わせろ……」
鏡子の顔が崩れ始めた。頬肉が剥がれ落ち、むき出しになった歯茎から歯が数本こぼれ落ちた。
「もう諦めなさいっ!」
「喰わせ……ろっ!」
最期の力を振り絞るように鏡子は飛びかかった。しかし真代にかわされると、そのまま砂浜に前のめりで突っ伏した。起き上がろうとしたが、干乾びた手足は崩れ、上半身だけとなった身体で、頭だけを持ち上げて真代を睨む。
「おおおおおお……………」
しかしその頭部も、首からボロッと崩れ落ちると細かく砕けて灰になり、あとにはローブだけが残された。
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