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第6章 9 ~終焉と始動~
警視庁警視総監室。
そのドアの前で立ち止まり、ため息と深呼吸を繰り返す若い女性警官がいた。しかし、ようやく決心がついたのか「よしっ」と小さく自分に気合を入れるとドアをノックする。
すると間髪入れずに「入れ」と唸るような男の声が返ってきた。
さらに緊張の面持ちとなった彼女は「し、失礼します」と言ってドアを開けると中に入った。
そこにいたのは警視庁のトップ、宇佐美剛志警視総監だった。
身長一九〇センチを超える筋肉質の巨漢で色黒のスキンヘッド。かつて暴力団同士の抗争事件で現場に出動し、銃撃されて生死を彷徨ったが生還。それからさらに気迫を増して、今ではその鋭い眼光で睨まれたら、百戦錬磨のベテラン刑事ばかりでなく暴力団の組長ですら萎縮するという。
「お、仰られました、し、資料を、お持ちしました」
そう言って彼女は警視総監の前にやって来た。その表情は蛇に睨まれた蛙のように怯えている。そして震える手で資料を机の上に置く。
「ご苦労。下がっていいぞ」
「は、はい」
逃げるように部屋を後にする彼女を見送った宇佐美は嘆息すると、彼女が置いていった資料を引き寄せた。その表紙には『警視庁警察学校入校生一覧』とある。右上には『部外秘』の朱印が押されていた。
表紙をめくると、一枚ずつに顔写真と氏名、そしてそれぞれの略歴などが記された新入生の個人情報が書かれていた。
宇佐美は一枚目をじっと見た。写真には、まだあどけなさが残るセミロングの女性が写っていた。その略歴を読む。
「なかなか面白いな」
そう言って資料をめくると表情を変えずに流し読みをした。だが次をめくった瞬間、その手が止まった。黒髪ロングヘア―の綺麗な女性だ。しかし宇佐美は顔をしかめると「じゃじゃ馬め」と言って嘆息する。しかもその略歴には目も通さずに次をめくった。
さらに数枚を読み進めたところでまた手が止まった。そして今度は目付きが変わる。睨むように写真を凝視したのだ。そこに写っていたのは黒髪ショートボブの女性。
「神忽那真代か。面白い。どこまでやれるか楽しみだな」
そう言って口角を上げると、また資料を捲った。
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