十九時

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十九時

「真斗 竜馬そろそろだな」 「そうだな、もし手紙の事が本当ならそろそろ来るな」 その時、別荘の住所を誰にも教えていないのにドアをノックする音がした。 「コンコン コンコン」 僕達三人はゴクリと唾を飲み込んだ。 「き、来たな開けるよ」 「頼む綾」僕は「今、開けます」そう言ってドアを開けた。 そこには綺麗な着物を着た20代くらいに見える女性と鶴姫旅館の制服と思われる服装をしている従業員らしい人、二人が立っていた、  僕は「あなたが瓶の中に便箋を入れたんですか?」と聞いたすると女性は「はい、その通りです」そう言った。  僕は「中へどうぞ今お茶を出しますから」 そう言った。  女性と従業員は「お構いなく」そう言い綾が勧めたソファーに座った。 僕は六人分のコップに麦茶を入れてテーブルの上に置いた。真斗も竜馬も俺も鶴姫旅館の従業員と向かい合う形でソファーに座った。  そして僕は話を切り出した。 「あの手紙に書いてある事は本当に起こる事なんですか?」 女性は言った「はい、実は私は初めからバブルは長くは続かないそう思っていました。  こんな経営をしてたらいつか潰れる私が継ぐ前に何とかしなければならないと、だから私は母に内緒で綾さんあなたのご両親に相談したんです。  周りの旅館とは違う事をしないと生きていかれない。他と同じように団体客ばかり相手にしていたらいつかお客様はいなくなってしまうと。  でも私の両親もあなたのご両親も私の話に耳を傾けなかった。   もう、時間がない。今すぐ鶴姫旅館に来てください。今の繁盛している鶴姫旅館に」  僕は言った「繁盛している鶴姫旅館に?」 女性は綾に言った「今から立て直さないと間に合いませんから。若い感性を持った綾さんならきっと立て直してくれる私達はそう思って来たんです。未来から」 綾は更に聞いた「未来から?」 女性は言った。「とにかく急いでください」その慌てぶりにただ事じゃない気がした綾 真斗 竜馬は貴重品とメモだけ持って女性と従業員の後をついて行った。  そして僕は聞いた「本当に未来から来たんですか?未来から来たと言う証拠何かありますか?」  女性は新聞を見せた「これは1987年の新聞よ。桜田綾さんとお友達が一番驚くニュースを持ってきた方がいいと思ったからあえて1987年の新聞にしたの」 「今は1985年、1987年二年先の未来の新聞?これは〜電話を携帯する時代が来るって事ですか?」 「これ?おもちゃじゃないの?」 「電話を携帯するなんてありえない。かえって邪魔になるような大きさですが?」 「電話ボックスがあるのに何でわざわざ電話を携帯?」三人は未来の新聞を見て驚きを隠せなかった。  女性は言った「わかりましたか?私は未来から来たんです。今から鶴姫旅館に来てください。お願いします。そして従業員に見つからないようにうちの旅館を観察して欲しいんです。  他の旅館のように団体客ばかりメインにした結果潰れてしまったんです。  だから他とは違うものを作ってバブル期が終わっても繁盛しているそんな旅館にしたいんです」 綾は聞いた「何故未来の新聞を?」  女性は「旅館の女将は新聞を取っておいて常に参考にして新しいものを作り上げるつまりヒントにしているんです。  今なら夕食で慌ただしい時間従業員に見つからないようにこっそり鶴姫旅館を観察して欲しいんです」  綾は「どうして僕が?僕はまだ高校三年生です。経営の勉強さえもしていないんですよ」 女性は言った「あなたは大学卒業後ご両親について経営コンサルタントの勉強をしてご両親と一緒に経営コンサルタントの会社で仕事をした。  そして1992年あなたは大きな賞を貰って注目されるようになる。  その時、綾さんはテレビで言ったんです。  この賞は1985年の夏休み鶴姫旅館の中にあるレストランに友人と行ってヒントを見つけましたそのヒントのお陰で立花旅館の経営状態を黒字にすることに成功いたしました。 友人達との楽しい思い出からヒントを貰ったので友人達のお陰です。  友人達がいなかったらあの時、鶴姫旅館のレストランに行く事もなかったし、こんな大きな賞なんて貰えなかった。友人に感謝します」そうテレビで言ったのです。  立花旅館とうちは昔からライバルです。  それなのに前から私がうちの旅館は危ないと言っているのに桜田さんのご両親もうちの両親も聞く耳さえ持たなかった。 なのにうちからヒントを得て立花さんの経営を立て直すなんておかしい。立花さんはバブル期の今から経営に行き詰まっていたんです。潰れるのは立花様の筈です」 綾は言った「でも、それでは運命を変えてしまう。僕はそんな事できない」  女性はもう一つの新聞を綾に見せて言った「これでも?」「メディアで注目されてる桜田綾さんのご両親が不正に立花旅館からお金を貰っていました。  息子さんが賞を貰ったにも関わらず私達夫婦が旅館の経営見直しするようにと息子に言ったからだ。誰のお陰だ!と言って脅していたとして桜田正一と桜田恵子夫妻が恐喝容疑で逮捕された」 新聞にはそう書いてあった。  そして女性は言った「うちを立て直してくださったら綾さんのご両親も犯罪に手を染める事もない。ご両親はうちの旅館の立て直しは元々反対していたんだから」  真斗と竜馬は言った「綾、鶴姫旅館に行こう。両親が犯罪に手を染めたら綾も仕事の影響がでるんじゃないか?」  僕は「そうだな」そう言うと鶴姫旅館に急いだ。 真斗と竜馬と一緒に急いだ。
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