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目玉の抜けおちた怪じゅう。顔がまだらにはがれた日本人形。けんばんの欠けたピアノが急に悲めいみたいな音をひびかせ、反応したヘコんだキカン車がレールをガタピシきしませる。
ボクは、うす暗くひんやりしたそんな中で、ただひっくり返っていた。片足がもげていたから。
ときおりカーテンのすき間からさしてくる人工的な光が、空間のほこりやちりを透かす。ボクのまわりの、実は黒でも灰色でもない、どぎつい緑やくすんだ赤やらの彼らの正体をうつす。
「夏が終わったらさよならね」
そんなそうこから出られたはいいけど、足が逆さまにくっつけられていた。それを正しく治してくれたのは美菜さんだ。その美菜さんが、なぜそんなことを。ずっとむかし、長いことボクたちいっしょだったのに。やっともう一度会えたのに――
夏がおわったらって、いつ? どうなったら夏はおわるの? そもそも夏って何?
ボクにはわからない。
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