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古泉 由羅。
先祖が異国から来た学者と言われており、街外れにある松林の中に屋敷を構えている。
クラサワの刑番所の長で、すらりと伸びた長躯に洋装を纏い、ゆるく束ねた金茶の髪を揺らして歩く。首に巻いたスカーフは大輪を開く牡丹柄で、お気に入りを公言している。
罪人を射抜く鋭い眼差しは青みの深い碧色。
先祖の血を盛り返したような容姿は、いかにも異国の紳士然としていて様になっている。
しかし口を開けば、話す口調は女言葉。仕草もどことなく女性を意識したような、ちぐはぐな印象を持たせる男だ。
他に、彼について周知の事実といえば、コトノハ堂の幸兵衛に特別気を許しているということくらいか。
強烈な印象に反して、彼の生い立ち、素性について知られていることは意外と少ない。
ならば、紐解こう。彼の辿った軌跡を。
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