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「ねえ、ママ。あのいちばーんうえにある本とって」
夕陽の射す図書室。
ここミューパー孤児院には多くの書物が寄付され、壁に設置された棚にはずらりと本が並んでいる。
5歳のマルトが指さした本をアリアは知らなかった。かつてはアリアもこの孤児院で暮らしていた身である。図書室には幾度となく出入りし、簡単には手の届かない上段にある本も脚立を使ってはよく手にとったものだ。
だが今、アリアが手にしている本は──。
「マルト。この本はあなたが読むには難しいわ」
アリアはその本を抱えたまま脚立をおりると、幾分か青ざめた顔で図書室を足早に出ていってしまった。
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