エミリィ・ブラントの手記

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 無論、GM育成学校ではそんなことは明かされない。三年の期間のうち、二年間は家事や心理学などを学ぶ。そして三年になると子どもたちを楽しませるためとして、絵本や小説を書かされるの。ゲームマスターにとって一番重要な想像力を学び、そして創造力の才をはかるためよ。  わたしはね、サンガ村という、とても貧しい村で育った。生活の基本は自給自足で、当然、娯楽なんてなかったわ。だから遊びのすべては自分たちで考えるよりなかった。ゼロからなにかを生み出す創造力。皮肉にも高く評価されたわたしの才は、娯楽がないからこそ備わったものだったのね。  そして首席以外のGMは、普通の孤児院へと派遣される。本当の意味でのGMの称号を得られるのはひとりだけというわけ。学長室へと呼ばれ育成学校の真の目的を聞かされた時、わたしは驚き、そして恐ろしかった。でも──同時にわくわくもしたの。だから多額の手付金を受け取った。  誤解しないでほしいのは、子どもたちには危害を加えない、決して危険な目にはあわせないというのが絶対ルールで、あくまでも安全に『人間ドラマ』を作るという契約のもとだったから引き受けたのであって、自分の好奇心やお金のためだけに引き受けたのではないということ。
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