エミリィ・ブラントの手記

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 子どもたちは、わたしによくこんなことを聞いてきた。 「門の外にはなにがあるの?」  この問いに対し、わたしが嘘を答えたことは一度もない。  門の外には普通に町や村があり、大勢の人が住んでいる。夢と希望にあふれているのよ、と。  けれど、子どもたちはそれを信じない。それもそうね。なぜって子どもたちは外の世界を見たことがない。幼い頃はその言葉を信じても、だんだん大きくなるにつれ人を疑う心も育ってくる。  どうして僕らは外にでられないのか。  本当に里親なんて存在するんだろうか。  そんなふうに思いはじめたら、もう終わり。見るもの聞くもの、なにもかもを簡単には信じられなくなる。むくむくとわきあがる好奇心、広がる想像力。そうなれば次に子どもたちがすることなんて決まっている。  脱走よ。  ソードたちもそうだった。
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