エミリィ・ブラントの手記

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 彼らはまず、門の向こう側はどうなっているのかを確かめようとした。この孤児院から外に出るためには門をくぐるしかない。脱出経路はほかにはないの。  敷地の外周はぐるりと塀に囲まれていて、塀の上部には有刺鉄線が張り巡らされている。だから外には門からじゃないと出られない。ソードたちは月に一度、町から物資が届くことを知っていた。子どもたちが寝静まった深夜にそのトラックはやってくる。  門はどうやったら開くのか。ソードたちはそこまでは知らなかったようだけど、とにかく門が開いた瞬間に外へ出ればいいと思っていたみたいね。ちなみに門には顔認証システムが搭載されていて、GMと出入りの業者しか登録されていない。だから子どもたちの力だけでは絶対に開くことはできないの。  そうして決戦の夜がやってきた。ソードは部屋から抜け出し、じいっと物陰に潜んでいた。トラックが到着するや否やアリアがパジャマ姿で駆けてきて「カイが大変なの!」と、わたしの気を引いた。その隙にソードが門から抜け出すという算段だったんでしょうね。  けれど、先にも記した通り彼らの作戦などわたしはお見通しだったし、真夜中にソードを外へ放り出すことはできなかった。だから、わたしはアリアに言ったの。
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