エミリィ・ブラントの手記

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「わかったわ。ソードが外へ飛び出す前に、門を閉めましょうね」  って。その時のアリアの顔ったらなかったわ。絶望の二文字が顔に浮き上がっていて、わたしは思わず笑ってしまった。結局、彼らの脱走劇は失敗に終わった。  その後も、彼らは幾度となく脱走を企てては失敗し、里親が決まらないままに翌年、孤児院を出て行った。その日のことはよく覚えている。迎えの車を見て彼らは青ざめ、特にアリアは泣き出さんばかりだった。別れを惜しんでいたのではなくて、自分たちの行く末を案じたのね。  このまま港に運ばれて売られてしまうのではないかとか。病院へ連れていかれて臓器を取り出されるのではないかとか。あるいは、見たこともない化け物の餌として献上されるんじゃないかとか。  そんな三人にわたしはこう声をかけた。 「あなたたちの未来に幸多からんことを」  そして、とびきりの笑顔で手を振った。  これがGM就任二年目までの話よ。
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