エミリィ・ブラントの手記

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 その秘密は図書室にある。  図書室には数えきれないほどの本があって、それは子どもたちにとっては娯楽のひとつだった。ちいさな子が読む絵本や童話。いろんな国から取り寄せた図鑑や辞書。ミステリー小説に恋愛小説。それからコミックなんかもあったわね。  その中に子どもたちの不安を煽るための本がある。ここと同じような孤児院を舞台とし、ここと同じように外には出られない環境で過ごす子どもたち。なんの不安も不満もなく平和に幸せに暮らしていたのに、ある日それは崩壊する。外には自分たちの知り得ない恐ろしい世界が広がっていて、自分たちは誰かに臓器を提供するためだけの入れ物、あるいは恐ろしい化け物の餌となるためだけの肉塊であると知る。  そんな本を読んだら子どもたちはどう思うか。もしかしたら自分たちも……と、そんなことはあり得ないと思いつつ不安と恐怖ばかりが増幅する。  更にわたしは、何冊かの本に仕掛けを施した。優秀な子だけが気付く、わかるであろう暗号を仕込んでおいたの。ここは危険、逃げろ。その本はいつもソードが持っていたわ。きっと彼は暗号を解読したのね。
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