君に捧げる最後の夏

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リコは目を真ん丸にして私を見た。 しばらくすると、言葉を選んでいるように思案し、 深呼吸してこう続けた。 「アスカ。ありがとう。  私、誰かにそんな風に言われんの初めてで。  正直、すっごいびっくりしてる。やけど…。」 ああ、私はフラれるんだ。 私が追いかけてきたものはこの夏で全部終わるんだ。 「実は、スポーツ推薦で進学するねん。  それで、県外の学校で寮生活になる。  練習だって今よりキツいと思う。  私は陸上大好きで、ずっと頑張りたいから、  余裕なくて、だから、ごめん。」 リコは精一杯、自分の言葉で伝えてくれた。 それだけで私は嬉しかった。 最後まで私を否定せず、受け入れてくれるような話し方に、リコの優しさが表れている。 私はこの人を好きになって、よかった。 この夏を全力で走りきれて、よかった。
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