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チェーン越しの殺意
スマホが鳴った。
メッセージを見た建志は、心の中で舌打ちをした。
「近所の人から聞いたんだけどさ」
亜里沙がそう言った。自分で呼び出しておきながら、素っ気ない態度だった。まだ一度も目を合わせてくれない。
袋から買い物をした食材を出し、テーブルに並べる。一つ一つを叩きつけるように。
なにをイラついてるんだ、と建志は思ったが言葉にはしなかった。こういう時は、下手に刺激しない方がいい。
「あなたとあのおばさんが一緒にいるところを見たって人がいるんだよね」
亜里沙がそう言った。全て出し終えた買い物袋を乱雑に畳む。
「あのおばさんって誰だよ」
建志はそう言って、スマホをフリックした。加奈との会話画面を慌てて閉じたのだ。
「中道のおばさんだよ」
建志は画面から顔を上げ、すぐに戻した。「見間違いじゃないの」
「私もそう思ったけど、特徴が建志にそっくりだったんだよ。顎髭があって、交通誘導の作業服を着てたって」
建志は笑った。「それだけで俺って決め付けるのかよ?」
だって、と亜里沙はテーブルの上の玉ねぎを握った。「一緒にホテルに入って行くのを見たって人がいたから」
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