チェーン越しの殺意

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 ドアが開く音。どうして。  ゴツ、ゴツ、と床を歩く音。土足の加奈。手には包丁。 「ど、どうやって入った」  尻もち。建志。ずるずるとそのまま後ろへ下がる。  来るな、と思わずスマホを投げつける。その後に、後悔。警察に連絡することが何よりも優先なのに。スマホは加奈の横をかすめる。  建志は、立ち上がる。途中、血で足が滑る。じんじん、と腕が痛い。逃げるな、逃げるな。手負いとはいえ、こっちの方が有利のはずだ。相手は女。返り討ちにしてやる。  息が荒くなる。目がかすむ。クソ、この程度で。  加奈が包丁を振りかぶる。素早く避け、膝を腹に突き立てる。そして顔面に拳を入れる。  加奈は居間の方へ吹っ飛ぶ。机に腰を打ち付けるが、包丁はしっかりと握っていた。  相当な力で殴ったはずなのに、加奈は立ち上がる。左頬から血が流れ、目は腫れている状態で振りかぶる。声はなかった。まるで操り人形のようだった。  向かって来る包丁を避け、顎へ拳を入れる。ゴワン、という手応え。仰け反り、仰け反り、倒れる。机に頭をぶつける。そのまま動かなくなる。
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