亜里沙の決意

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 そうだ、建志も呼ぼうかな。三人で買い物なんてしたことないから初めは嫌がるだろうけど大丈夫、きっとすぐに打ち解けて仲良くなれる。だって建志も本当は娘と仲良くなろうとしてくれている。娘が家にいる時は絶対にタバコを吸わないし、吸っていたとしても娘が帰って来たらすぐに消してくれる。そういう優しさがあるのだ。  亜里沙はスマホを取り出し建志を呼び出したが、留守番電話になった。すぐにメッセージで一緒に買い物行こう、と送った。  もうすっかり元気になった娘が、亜里沙の手をぐいぐいと引っ張った。娘の手はとても儚い感触だった。しっかり握らなければ砂のように手から零れ落ちていきそうだった。  しかし、とても暖かった。亜里沙は初めて娘の手を握った時のことを思い出していた。  病室のベッドで横になる亜里沙に看護師が娘を連れて来てくれた。娘は眩しくて、愛おしくて、触れるのが怖いくらいだった。娘を胸に抱き、柔らかな手を握った。するとわずかだか娘が握り返してくれた。うわあ、と思わず声を漏らしていた。生命の始まりをそこに見たような気がした。この子は私の子供だという当たり前のことが胸に重く響いた。
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