亜里沙の決意

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 太陽の光が窓から差し込んできて、二人を照らした。看護師が窓を開けると、十一月とは思えない暖かな風が舞い込んできた。カーテンがふわりと大きく広がり、看護師がそれを手で抑えた。思わず欠伸をしたくなるほど穏やかな日だった。亜里沙の気持ちが伝わったのか、娘が大きな欠伸をした。  そこで娘の名前を思い付いた。少し古風かもしれないが、この季節に相応しい素敵な名前だと思った。  するり、と娘の手が離れた。  駆け足で前を行く娘に思わず、待って、と声を掛けた。心から待って、と。  娘は立ち止まり振り向き、お母さん早く、と手招きをする。  亜里沙はすぐに娘に追い付いた。  生まれたばかりのあの頃のように、亜里沙は娘の体を抱いた。  もうこの子から絶対に目を離すもんか。この子を絶対に幸せにするんだ。  亜里沙はそんな思いを込めて、娘の名を呼んだ。
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